10年ほど前に、父親の所有する土地に戸建住宅を建てました。父親との話し合いにより、地代は当初から支払っていません。ところが、昨年末、父親が死亡したことから、親族間で相続財産の分割をすることになりました。遺産の評価について親族間で特に争っているのではありませんが、できれば、公平な分割をしたいと考えています。私が父親から借りている土地はどのように評価すべきでしょうか。
建物の所有を目的とする土地の賃借権は借地権となりますが、賃借権には相当の賃料の支払いが必要になります。ご質問のケースは、借主が貸主から無償で土地を借りて使用していますから、土地の使用貸借になります。使用貸借とは無償かタダ同然により目的物を借りることです。使用貸借は特別な人間関係がその背景にあります。使用貸借契約に基づく土地の使用権は旧借地法や借地借家法の適用がなく、借地権に比べて非常に弱い権利です。
使用貸借であっても、契約で定められた期間内や契約で定められた目的による期間内であれば、その土地を独占的に使用収益することができます。しかし、土地の使用借権設定のほとんどは、契約書を取り交わさず、その目的や期間などが明示されていません。使用借権の経済価値の評価に当たっては、合理的は判断が求められるところです。
理論的に、土地を使用することにより借地人が経済的利益を受けているのであれば、その利益を対価として価格が形成されます。使用貸借契約に基づく使用借権の評価手法には、借地権価格との比較による方法や損失補償基準に基づく方法などがあります。使用借権の価格は、私の経験では、更地価格に対して0%~20%程度といったところでしょうか。使用借権の付着している土地については、使用借権の経済価値が減価となります。
なお、相続税の申告に当たっては、使用借権の評価はゼロとされています。相続税、贈与税の課税対象となる土地の評価は、財産評価基本通達により、課税庁内部の取り扱いと解釈が統一されています。これらの評価は時価そのものではなく、納税義務者も財産評価基本通達に拘束されるわけではありません。
昭和50年に建築した8階建てのビルを所有しています。繁華街に立地するため、1階から3階までは店舗、4階から8階までは事務所として賃貸しています。バブル経済崩壊後、景気の低迷が続いていたことから、3年ごとの契約の更新に当たっては、賃料は更新前のものと同額にしていました。しかし、最近は地価が上昇に転じ、景気も良くなってきたことから、今度の契約更新のときは、1階の店舗の賃借人に家賃の増額を申し込もうと考えています。不動産業者の話では、地域の店舗物件は需要が強く、新規の賃貸借契約において、私のビルの1階店舗の家賃よりも50%以上高い単価で成約されているようです。現在の1階店舗の月額家賃は80万円です。更新後の家賃はどのくらいが妥当でしょうか。
賃料は新規賃料と継続賃料に分けられます。新規賃料は、建物や土地を新たに賃貸する場合の賃料です。需給動向が著しく逼迫しているような状況でない限り、地域の概括的な賃料相場よりも高ければ、新規の成約が困難となります。新規賃料は通常は市場で決定されます。
一方、不動産の賃貸借の継続を前提とした場合の賃料を継続賃料と言います。継続賃料は新規賃料と異なり、それまでの賃料の影響を大きく受け、継続賃料の上昇率は新規賃料に対して緩やかなものとなります。継続賃料の遅行性です。そもそも、土地や建物の借主は、その不動産が生活や営業の拠点ですから、賃料の大幅な上昇は死活問題となりかねません。
継続賃料の評価に当たっては、対象不動産の状況、耐震性などの建物の個別的要因、それまでの賃料改定の経緯などの調査が必要になります。相談のなかの情報のみでは的確な金額は算出できませんが、あくまでも参考の数字として、建物の築年数を考えると、おそらくは20%程度の増額が上限になるのではないでしょうか。
賃料の増額は貸主と借主との相対の交渉となります。交渉のひとつの方法として、地域の家賃相場をもとに、1階部分を新規に賃貸するといくらになるのか、客観的な立場の不動産鑑定士に調査してもらい、それを材料に交渉してみるのもいいと思います。
ベランダからの眺望が気に入って、郊外の新築マンションを購入しました。しかし、半年後、南側の隣接地に建築計画の看板が立てられ、来年にはマンションの建築が始められる予定です。そのマンションが建てられると、ベランダからはそのマンションの外壁しか見えないことになってしまいます。売主となる分譲業者が周辺の建築計画を調査しなかったか、あるいは建築計画について知っていたにもかかわらず、その説明をしなかったのか、いずれかの場合には、、眺望権の価値に相当する損害を売主に請求しようと考えています。眺望権の価値はどのようなに評価されるのでしょうか。
従来からの眺望をほかの建物などにより妨害されない権利が眺望権です。しかし、眺望権については、実定法上の根拠はなく、法律上の権利として確立されているものでもありません。裁判では、眺望がマンションなどの建築物により阻害されたからといって、それがただちに眺望権という権利の侵害になるのではなく、眺望を阻害される住人にとってその眺望が特別の価値をもつと社会通念上認められる場合にのみ法的に保護されると考えれられています。受認権と関係するところです。隣接地に建物の建築が合法的なものであれば、その建物に対して眺望権を主張できるケースは相当に限られるのでしょう。
しかし、眺望が阻害されれば、そのマンションの市場価値は減価します。高層マンションの特徴のひとつは眺望です。富士山が見通せる住戸と、窓を開ければ隣のマンションの外壁しか見えない住戸とでは 他の条件が同じであれば、等価であるはずがありません。権利は阻害されていなくても、経済的な利益への影響は否定できません。
マンションの鑑定評価に当たっては、階層により、快適性などが異なるため、階層別効用比を考慮します。住居用のマンションは一般に、上階にいくほど階層別効用比は高くなります。眺望権の評価に当たっては、そのマンションや類似したマンションの階層別効用比を参考にして求める手法、当初から眺望が阻害されている低層部分の住戸との分譲価格の比較により求める手法などを適用し、眺望権の阻害による資産価値の減少を判定します。それでも、おそらくは、価値の減少は20%程度が上限になるものと考えます。




