昭和38年、不動産の鑑定評価に関する法律が制定されました。土地などの不動産の適正な価格の形成に資することを目的に、不動産鑑定業者の登録、国土交通大臣または都道府県知事の監督、不動産鑑定士の資格試験、不動産鑑定士の責務などが具体的に規定されました。
不動産の鑑定評価に関する法律第2条第1項において、「不動産鑑定評価とは、土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう」と定めています。つまり、不動産の鑑定評価には、土地や建物の所有権についての価格、借地権、民法上の賃借権、区分地上権、地役権、借家権などの権利の価格、地代や家賃の評価が広範に包含されます。
不動産は固定性や不増性などの自然的特性を有するために、取引市場が地域的に限定され、さらには、公法上の規制や接道状況などによる個別性が強く、土地などの不動産の適正な価格や賃料を求めるには、合理的な市場の価格形成機能に代わる評価活動が不可欠になります。当事者の主観的な考えや事情を排除した不動産の適正な価格や賃料を求めるためには、不動産市場の市場メカニズムについての体系的な知識や技術を体得した専門家の鑑定評価活動が必要なのです。
不動産鑑定業とは、「他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行うことをいう」と表現しています。不動産鑑定士の国家試験に合格し、一定の実務経験を有する者が不動産鑑定士です。不動産鑑定士以外の者が鑑定評価を行うことは法律により禁じられています。
不動産は高額であり、しかも、私たちの生活に不可欠な財です。一方、不動産についての争いは価格や賃料に起因することが多く、また、その解決も金銭の授受で行われることが少なくありません。例えば、遺留分減殺請求。資産のなかに土地や建物があれば、その価格についての判断が重要になります。交渉のなかで、遺留分減殺請求を行使した側は不動産の価格はもっと高いと主張し、金銭を支払う側は、不動産の価格はそんなに高くないと反論することになります。公平な観点からの専門家による評価が必要なところです。
借地権の更新に際しての更新料の額も、本来は、借地権の存する土地の元本価値を反映する更地価格を把握する必要があります。便宜的に路線価で求めた更地価格に一定割合を乗じて更新料の額を求めるケースが多いようですが、路線価は個々の土地についての適正な価格でもなければ、時価でもありません。更新料の支払いに当たっては、借地人からすれば更地価格は低いほうがいいのだけれども、借地人が借地権を地主などに譲渡するときは、一転して、更地価格は高いほうが有利になります。
不動産の価格や賃料は、その当事者の立場、状況、考え方、方策などによって、様々な金額が算出されるのはやむをえないかもしれません。しかし、合理的な市場を前提とした場合の価格や賃料はひとつです。それを求めるのが不動産の鑑定評価です。
担保評価、遺産分割、減損会計、株価算出、現物出資、不動産の交換、親族間の売買、相続税の時価申告、再開発の権利変換、継続賃料など、交渉やラブルラブルの解決のためのツールとして、あるいは税金対策として、不動産の鑑定評価が効果的です。




